株式会社興研見学レポート

〜はじめに〜

株式会社興研は、水循環冷式を用いた自家発電能力測定器及び非常用発電装置の開発をしている専門企業です。この技術は、特許を取得しており、開発者の松本 社長は平成7年に科学技術庁長官賞を受賞しています。また、長野冬季オリンピックで非常用発電装置としてサポートをしたり、現在はNTTの各局に設置してあるなど、さまざまな分野で活躍しています。興研との出会いは、今年1月にあった学内のイベントで車両展示をしたときに、社長の松本様が来られたのがきっかけです。松本社長は、車両もそうですが当チームの活動にとても興味を持っていただき、支援をしていただけることになりました。そして、見学のお誘いを受けこの見学が行われることになりました。

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〜見学レポート〜

興研に着いて、まず会社の建物らしきものがないことに驚かされました。私が考えていたものは、ビルであるとか、倉庫があって作業や開発をしているものだと思っていたら、コンテナとトラック、大きい箱があるだけだったのです。実は、コンテナは研究室になっていて、トラックは抵抗器、大きな箱は発電装置だったのです。これらには驚かされました。特に、コンテナを研究室にしているところなんかは、無駄な費用の削減になり、必要に応じて増やしたり減らしたりができ、とても効率的だと考えさせられたのです。


 
 ↑株式会社興研

当日の見学は、実際の稼動しているところを見せてもらいました。やはり、稼動しているのを直接間近で見ることはなかなか体験することのできないことです。発電機と言ったら地響きがするように稼動するのかと思ったら、意外にもスムーズな動きをしていて、その静かさの中にある機械としての迫力には鳥肌が立ちました。


トラックには、純水抵抗器といって水の抵抗を利用した抵抗器が搭載されていました。本来純水は絶縁体なのですが、塩化ナトリウムを加えその量を変えてやることで水の導電率をコントロールし、電力の大きさを変更しているそうです。使用する水は、水道水または淡水魚の棲める水を使用し、電力は電圧と水の導電率で決まるらしく、水の導電率を変えるために塩化ナトリウムを使用しているそうです。

 
 ↑純水抵抗器
 このポンプ内に約200リットルの水が入っています。

この抵抗器の小ささには驚きました。なにせ、6600V6000KWまで制御が出来る大容量な抵抗器なのにもかかわらず、制御盤・電極部・冷却部・水処理部を一つのコンテナに収容し、車両搭載のまま運用することができるのです。

制御盤にあるメーターに見たこともない「MW」という単位があったのです。そう、それはメガワットだったのです。こんな単位は普段見ることが出来ないので、思わずカメラのシャッターをきってしまいました。

 
 ↑メガワットメーター
 皆さんはこんな大容量のメーターを見たことがありますか?


発電装置のディーゼルエンジンはV12気筒で1500psもあり、音がうるさいだろうと思っていましたが意外と静かでした。工事現場と同様、もしくはもっと静かです。何故だろうと装置を良く見てみると壁部分に消音対策がしてあったのです。そして、無負荷運転により排気管に堆積したカーボンは負荷運転によって排気口から黒煙・白煙・火の粉となって発生してしまうのですが、排気管内に堆積したカーボンを除去する為に負荷装置を使用し徐々に出力を上げ排気ガスと堆積物の除去状況を見ながら全負荷試験を実施し排気管内のクリーニングをするそうです。目の届きにくいところまで気を配っていることに技術者として教えられるものがありました。

 
 ↑V型12気筒エンジン
 ある意味、F1エンジンより凄いです!


ディーゼルエンジンの発電量は1000kwもの発電量を持つそうです。1000kwと言ってもピンと来ないかもしれませんが、一般家庭の消費電力が約3kwなので、この発電装置ひとつで300軒以上もの家をカバーできる計算になります。

この発電装置には並列運転機能が組み込んであり、非常用と常用の整備中の代替機としても用い、系統連系の機能は需要からみてのピークカットに、電気事業者では負荷密度の小さいところへのピーク補充にと限りない使用方法が提案できるそうです。しかも、2つの発電装置をつなぎ同期運転もできてしまうのです。この同期運転は直流でつなぐのではなく、交流のsinカーブを同期させて電力を2倍にさせていると言うから驚きです。単に発電をするのではなく、それぞれのニーズにあった使用方法ができる事には感心させられました。

 
 ↑2台の発電装置で同期運転中
 近くに居る人間と比べると結構大きいです。


そして、この装置を運搬する時にはやはり大型クレーンを使用するのかと考えていましたが、この考えはまだまだ固定概念に捕らわれていると言うことを教えられました。この装置は自ら持ち上げる機構を搭載しているのです。装置の両サイドにある4本のアウトリガーで20トンもある装置を、水平を自動で保ちながら持ち上げていくのです。この持ち上げる動作は、とても静かで滑らかなのにもかかわらず5分もしないうちに、トラックの荷台に乗る高さまで上昇してしまったのです。しかも、これに使用しているエンジンは4psほどしかない小型のエンジンを使用していて度肝を抜かれました。固定概念にとらわれずに自由な発想で開発をし、色々なアイディアが織り込まれた装置なんですね。

 
 ↑アウトリガー
 20トンもの装置が4本のアウトリガーで持ち上がっています。


 
 ↑アウトリガーのエンジン
 こんな小さいエンジンで20トンを持ち上げているのかと思うと凄いです!


興研の抵抗器や発電装置は高出力なのにもかかわらず小型でコンパクト、しかも、抵抗器はトラックに搭載されているし、発電装置は自ら装置を持ち上げトラックに搭載して運搬が出来るなど、当チーム車両のコンセプトである、小型軽量と同じだということに気づき、当チームの目指す所と、興研の目指す所が一緒なことに感激しました。

興研の見学がひと段落つき、当チームの車両説明にうつりました。今度は自分たちの番だと言わんばかりに、チームメンバー全員が積極的に説明している姿が見られました。なかなか自分たちは、他分野のエンジニアの方と話す機会はなく、とても良い経験になり教えることもあり、教わることもあったりとお互いの技術について話している姿もありました。体で車両の凄さを感じてもらうべく、車両に乗車してもらいドライバーの目線で体験してもらう。この機会に、私たちの製作した車両を肌で感じ取ってもらえたのではないでしょうか。

 
 ↑説明風景
 興研の皆さんにも車両に乗車してもらいました。
 普段は、作業着のメンバーもスーツを着るとビシッと決まって見えます。

 
 ↑社長の松本さん

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〜まとめ〜


この見学は驚いたままで終わるのではなく、驚きから学ぶことが沢山あり、休む暇のないとてもエキサイティングな一日になりました。今回の見学から、私たちはまだまだエンジニアとしてはヒヨコだなと教えられることが多くありましたが、これは、当たり前のことで大学では教えてもらうことの出来ないことです。興研の方々は、この見学会を通してエンジニアとしての考え方や行動の仕方を私たちに教えてくれ、私たちはエンジニアとしてのあり方を考えさせられた有意義な1日になりました。

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 株式会社興研
 〒243-0215 神奈川県厚木市上古沢1369
 TEL:046-250-0188 FAX:046-250-0189

 

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